第26章 あなたの風邪は何処から
温かくて消化の良いものを並べた食卓、我ながらよくやったと自分を褒める
食欲はあまりないはずだけど、意外にもぱくぱくと食べ始めたその姿に安堵の息が漏れた
「ふふ、食欲があってよかった」
「食わないと怒られるからな」
ゆっくりと食事を進める彼の目には、いつも以上に疲れが滲んでいるように見える
「・・早く良くなりますように、」
そう呟いて見つめると、彼は一瞬驚いた顔をして少しだけ目元を赤く染めた
「大袈裟にも程があんだろ、過保護はどっちだよ」
「・・!」
確かにそうかもしれない、何だか恥ずかしくなって私も下を向いた瞬間、静かな部屋に大きな着信音が鳴り響いた
「あの、相澤くん、電話だよ、?」
「ああ、気にするな」
一度切れたそれは、一向に諦める気配もなく数秒おきに何度も何度も彼を呼び続ける
「本当に出なくて大丈夫・・?」
「次はお前のが鳴るぞ」
その言葉の直後、今度はキッチンのカウンターから同じ音が響いた
立ち上がり手に取った画面に表示されたのは賑やかな彼の名前、何度も鳴らし続ける姿が容易に浮かんで思わず笑いが零れる
「何の用事だろうね・・?」
「放っとけ、どうせ来るだろ」
「急用かもしれないよ、?」
用件に心当たりがあるのか、大きな溜息をついた相澤くんはふらりと立ち上がって
首を傾げている私を数秒眺めると、挑発的に笑ってパソコンの前に座った
「徹夜はしない、たぶんな」
マウスを握るその手を引き剥がし、強引にソファへと連れていく
差し出した薬を飲んだ彼は楽しそうに薄く笑って、私をその腕の中に閉じ込めた
「構って欲しいならそう言えよ」
「仕事しちゃダメって言いたかっただけ・・!」
気付けばいつものように彼を見上げていて、甘く触れた指先が私の髪を耳に掛ける
「お願いだから、今日は早く寝て・・!」
「お前を抱くか、仕事に戻るか、」
「何その二択!」
思い切り押し返しても当然ながら彼はびくともしなくて、唇が触れるといつもより熱い舌が滑り込んだ
「、ちょっと・・!風邪が移っちゃう、」
「移すと早く治るって言うからな」
お前を抱いてから仕事に戻るよ、そう言って服のボタンに触れた彼を思い切り睨みつけた時、部屋のインターホンが三回連続で喧ましい音を響かせた