第25章 反撃は二人だけの夜に
カモミールの香りが身体にじわりと沁み込む
それを堪能すると目の前の小さなケーキ皿を引き寄せ、思わず小さく独り言ちた
「そう、こういうのがしたかった・・♫」
テーブルを挟んだ目の前の椅子には、二つの紙袋
15、いや20軒くらいは回っただろうか
それだけ足を運んで得た収穫はこれだけ
そう、こういうのがしたかったんだ
数ヶ月満たされなかった心の一部分がたっぷりと満たされて、口元が少し緩んでしまう
その時鞄から伝わった振動にスマホを取り出すと、相澤くんからの連絡だった
「わ、電話じゃない・・!」
“どこに居るかくらい、連絡くれてもいいんじゃないのか”
あからさまに不機嫌なその文面はさておき、重要なのは電話じゃないという点で
少し位は私も信頼を勝ち得たのかもしれない
“ごめんね、これから帰るところです”
現在地と今晩のメニューも書いて送信すると、それはすぐに既読になった
“今日はありがとう、大好き”
“そういうのは直接言え”
家に着いたらちゃんと連絡しよう、
ケーキを急いで頬張ると、まだ少し残っているハーブティーはそのままに
私は心地よく疲れた足で立ち上がった
「そんなに楽しかったか」
「ありがとう、ございました・・」
俺の顔色を窺いつつも、隠しきれない上機嫌なその表情を見下ろしながら、柔い肌に口付ける
肩の紐を噛んで下ろすと彼女の頬が紅く染まった
「とてつもなく長い一日だったよ」
「ふふ、ごめんね」
お詫びに今日は頑張るから、照れ臭そうに目を逸らしてそんな事を言われると、どれだけ眉を顰めても身体は素直に反応して
「言ったな、後悔するなよ」
「あ、でも明日も平日だからね・・?」
「知るかそんなもん」
欲しくて欲しくて、早く繋がりたくて堪らない
一日中彼女の事ばかり考えていた自分が悔しくて
嬉しそうに今日の収穫を見せて来たその顔を快楽に歪めて、俺の事だけでその頭をいっぱいにしたいと、抑えきれない熱が全身に溜まっていく
「一人で出掛けたい、電話をかけるな、昼食を取れ、徹夜をするな、だったな」
「え・・!え・・!?」
「他の男に妬くな、に関しては無理な相談だ」
もう片方の紐も口に含んで下へ引く
ぐるぐると考えているのだろう、何度も瞬きをしたその瞳がチラリと俺を見上げた