第25章 反撃は二人だけの夜に
「えっ、いいんですか」
始業時間の迫る職員室、各々が一日の準備を進める中、のんびりと放たれたリカバリーガールの言葉に思わず口が開いてしまう
「ここ数ヶ月、出張続きで迷惑かけたからね、
今日の午後はゆっくり息抜きでもおし」
差し出された飴にお礼を言い、ちらりと相澤くんの方を見ると横の山田くんが大きな声をあげた
「よかったじゃねェかめぐ!、って言っても
囚われの姫はどこも行けねェかァ!」
不思議そうに他の先生方が見守る中、山田くんはにやにやと相澤くんを見つめて
なんとなく気まずい雰囲気に目を伏せると、すれ違い様に彼は私に声を掛けた
「せっかくの厚意だ、あまり遅くなるなよ」
「・・え」
いいの?、そう聞こうとした時には彼はもう廊下を歩き始めていて
ヒューと口笛を吹いた山田くんが蹴り飛ばされているのが見えた
無事に午前を終えたお昼休み、これからの事を考えると無意識に頬が緩んでしまう
化粧品、洋服、下着、ゆっくりと見て回りたい物が多すぎる
合理性を重んじる彼とのお買い物はどうしても効率的に回ることを優先してしまうから
「気にするな、見て回ること自体が楽しいんだろ」
相澤くんはいつもそんな風に言ってくれるけれど、なかなか心のままに連れ回すのは気が引けて
「あれ、薬師先生、もう帰るんですか?」
「そうなの、どこ行こうかな〜!」
生徒の言葉に浮かれた返事をしてしまうほど、るんるんと胸が躍っている
エリちゃんの為に以前お願いしていた林檎のお菓子を受け取ろうとランチラッシュの居る食堂を訪れると、珍しい光景が目に飛び込んできた
「あ!薬師センセー!」
爽やかに手を振る切島くんの横には、爆豪くんや上鳴くんの姿
その隣のテーブルには心底面倒臭そうに昼食をとる相澤くんと、カシャカシャとそれを写真に収めひーひー笑っている山田くんが見えた
「俺、相澤先生が食堂でメシ食ってるの初めて見ました!」
「うるせえな、黙って食え」
朝ごはんの量足りなかったかな・・?、
愛しい人がきちんと昼食をとっている事への喜びと同時に、そんな心配も頭を掠める
少し距離のあるその場所に控えめに手を振ると、相澤くんが此れ見よがしにもぐもぐと食事を頬張り、怖い顔で眉間に皺を寄せた