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◉拗らせろ初恋◉【ヒロアカ】

第24章 口止め料は甘い香り


エリちゃんが寝静まったのを確認し、静かに自分の部屋へと戻る

缶ビール片手にこちらを向いた彼の目が見開いて、思わず笑ってしまった

「もう、そんなに驚かないでよ」

私の部屋でもあるんだからね、と口を尖らせると
彼はぽんぽんと自分の横を叩いた

「エリちゃんは」

「さっき寝たから数時間は大丈夫だと思う」

そうか、そう静かに呟いた相澤くんの横に腰掛けると
缶をテーブルに置いた彼が私の身体を倒して囁いた

「おかえり」


離れていた夜を埋めるような深い口付けに頭がくらくらする
唇が離れる度に二人を繋ぐ銀の糸も
到底足りない、と不機嫌に細められるその目も

堪らなく愛しくて


「寂しかった、?」

「全然」

「私は寂しかったよ」

そう言って軽く口付けを返したつもりが、息ができないほどまた執拗に舌を絡められて
逃げられないこの感覚に身体が火照っていくのを感じる


「香りがしないって事は、抱かれる気なんだろ」

「え、っ!あ、知ってたの・・?」

お前がその気なら付き合うよ、そう低く囁かれると顔に熱が集まった

「今日は相澤くんに会いたいと思ってたから・・」

「昨日と一昨日は思わなかったのか」

「揚げ足取らないで・・!」

意地悪に笑った彼は一瞬身体を離すと、棚の上に伸ばしたその手に小さな瓶を掴む

「却って心配される俺の身にもなれ」

「え、だから香りが移っちゃ・・」

「不仲を疑われるのは癪だ」

蓋を開けると広がった甘い花の香り
さらりとしたそれが相澤くんの掌に落ちて

じっくりと手脚を滑った指先が部屋着の中の素肌に触れた

「や、だぁ・・、普通に塗って・・!」

「文句が多いな」

満足気に上がる口角も、瞳の中に揺れる熱も
その全てが私に愛の言葉を囁いて

もう貴方無しには生きられないと泣き出したくなるほどに、満たされて滲む


「未だに苦しくなるよ」

香りを放つ胸元に唇を寄せて
何がこんなに不安なんだろうな、そう自嘲気味に零れたその声


この香りが

儚くて脆くて、一度は消えたあの恋に
いつまでも貴方を縛っておけるのなら




苦しい、ままでいて



「だから、まだ使ってるの」

「・・お前も大概だな」

確信犯とはタチが悪い、そう言って挑発的に笑った彼が服を脱ぎ捨てて
とんでもない事を言ってしまったかもしれない、と私は少しだけ後悔をした
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