第3章 いつもよりハイペース
「それではァ!めぐの雄英ティーチャーズ仲間入りを祝してェ!」
「「「かんぱーーーいっ!!!」」」
わいわいと始まった歓迎会、彼女から一番遠いテーブルの隅で酒を進める
皆の輪の中に響く鈴を転がすようなその声
ころころと変わる表情をずっと見ていたい、そう思ってた
今はそんな綺麗な感情じゃあない
その声を、その表情を、俺だけに
お前の気持ちを無視して突き放した、お前を泣かせた最低な俺に
向けてくれ
「ヘイヘイヘイ!イレイザー!
今日はいつもよりハイペースなんじゃねェのォ!?」
「だまれ」
「HAHA!本調子ってことで何よりィ!」
呑んでもいないのに絶好調に煩い山田がつまみを平らげていく
彼女も酒にはあまり強くないらしい
赤くなった顔に眠そうな瞳、目の毒だと思いながらも見つめずにはいられなくて
「Ah〜お前のその熱視線久々に見るわ〜
彼女の個性、永遠に消えそう!HAHAHA!」
「るせえ、死にたいか」
お前がここに居ると俺まで目立つだろ、あっちいけ、そう言って手で払うがにやにやと笑ったその顔は全く俺の前を動かない
どいつもこいつも揶揄いやがって・・
酒の肴にされてたまるか、そう目の前のジョッキを握った
「ねぇめぐ?あなたも結構いい年よねぇ?
私が言えた立場じゃないけど、その辺、
どうなのかしら?」
「いやホントどの口が言ってんダァ!
ミッドナイトォ!」
人の悪い笑みを浮かべて香山さんが俺の様子を見ている
酒が入るとこの人は本当に碌なことがない
心底楽しそうなその顔を思い切り睨みつけ、動揺が絶対に露呈しないようにと酒を流し込んだ
「ふふ、そうですね、
結婚できるように頑張らないと!」
少し驚いた様子の彼女が目を見開いたのは一瞬、すぐに口から出た当たり障りのない回答に安堵の息が零れる
夢を追い医療の道に進んだ彼女だ、きっと忙しく過ごしてきたのだろう
そうほっとしたのも束の間、完全に出来上がっている香山さんはずい、と迫り彼女の腕を掴んだ
「でも好きな人くらいは、居るのよねぇ?」
いつもの酒癖で「吐け!」と詰め寄り彼女の肩をぶんぶんと揺さぶる
「おい、」
まともに回らない頭で一応止めに入ろうとしたその時、俺の予想に反して赤面した彼女が香山さんに答えた