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◉拗らせろ初恋◉【ヒロアカ】

第2章 余裕で跳べてしまうから


耳元で響いたその声に、募らせた想いは容易に溢れて
それらが言葉になってしまいそうになるのを
必死で抑え込むように唇を噛み締める


「いつも通りでいい、心配するな」


どうしようもなく貴方が好き、離れてもずっと貴方だけを想ってた、こぼれないように、伝えないように、気付かれないように


「・・ありがとう、がんばるね」

どうか気づかないで、どうか突き放さないで
同僚以上は望まない、側に居させてもらえるならそれだけで私は、









目を覚ますように吹き込んだ強い風、
部屋のカーテンを大きく揺らしたそれが、机上の業務資料を一枚攫うとひらりと空へ舞い上げた




「、わ・・っ!」

慌ててバルコニーから身を乗り出し、思い切り伸ばした手の先でかろうじてそれを捕まえる



「っちょ、おま、危ねェ!!!!」

よかった、そう思ったと同時に、離していたスマホから聞こえたその声
ぐらりと前のめりにバランスを崩し、ぎゅっと目を瞑った瞬間



逞しい腕が私を支え、冷たいバルコニーの壁に背中が付くととてつもなく低い声が頭上で響いた


「ったく、何階だと思ってる・・!
 そういうところもそのまんまかよ」

焦ったように息を上げ、シュルルと捕縛布を回収した相澤くんが怒りを隠さず眉間に皺を寄せる


「ありがとう、た、大変失礼しました・・」 

睨み付ける目、怒りを帯びた声色、その凄まじい覇気とは対照的に
私の身体が壁に強く当たらないようにと、頭に優しく回された大きな手


「ふふっ、ごめんなさい」

「何笑ってんだ・・!」

眉間の皺を深くしながら怖い顔で凄まれても



「だって、相澤くんの優しいところもそのまんまだから」

口走った途端、視線を足元に落として
彼の表情が暗闇で見えないことに安堵している自分が居る

学生の頃からこれほどの距離を彼は跳んでいただろうか、私の知らない十年は彼を大きく変えたに違いない


でも、呆れたようなその視線が、懐かしい大きな手が、



「相澤くん、変わらないね」

目を伏せたまま呟いた言葉は彼の耳に届いただろうか、大きな溜息が聞こえて私はまた無理やり笑みをつくる


「あとね、コーヒーの匂いがする」

「お前のせいだろうが」

「ふふ、ごめんね」

まだ好きでごめんね、言葉にできないそれを飲み込んで、私は声をあげて泣きたくなった
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