第3章 いつもよりハイペース
「彼は全然そんなつもりは無いというか、!
私も、一緒に居られるだけで充分で・・」
目を伏せて話す彼女に釘付けになる
酒のせいかそうではないのか、彼女の頬が紅みを増して
・・・は?
彼女の口から出た「彼」という特定の男の存在に頭の中が真っ白になる
付き合ってる男が、いるのか・・?
何も不自然じゃない
こんなにいい女なんだ
それに年齢も年齢だ
何一つ不自然じゃないだろう
食らったダメージを最小限にするため、回らない頭を回し必死に納得しようとする
が
「一緒に居られるだけで充分」
そこまで彼女に惚れられているそいつが憎くてたまらない、しかもだ、「そんなつもりは無い」だと・・
結婚したい彼女をはぐらかして、コイツの好意に胡座かいてんのか・・!
とんだクズ野郎じゃねェか
悪い酔いが全身に回っていくのを確かに感じるが
それでも呑まずには居られない
「・・連れて来いぶっ殺してやる」
「HEY相棒、心の声が漏れちまってるぜ?
ま、確かにお前にはキチィよなァ・・」
そんな野郎のどこがいいんだよ
俺だったら待たせたりしない、絶対にお前を幸せにする
だから
「・・俺に、しろよ・・・」
「HEYショーチャンまた漏れてるぜ、
ってか飲み過ぎだその辺にしとけ・・っ!」
頭を鈍器で殴られたようなショックと共にアルコールが身体を支配するのを感じる
そりゃ、昨日のこともノーカンにされるわけだ
再会に浮かれて迫った昨日の俺も、一発ぶん殴ってやらないとな
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どうしよう、勢いでなんか変な言い方しちゃったかも・・!嘘は言ってないけどなんか変な空気になっているような・・
離れて座る相澤くんをチラりと見ると、沢山呑んだようで寝てしまったみたいだ
「あ〜あ、完全に潰れてやんの・・
悪い、俺一旦コイツ連れて帰るわ!」
山田くんはそう言って彼を背負うと早々にお店を後にした
「で? その人とはどのくらいお付き合いしてるの?」
まだまだ離してくれない香山先輩が私の腕をぐいっと掴む
「い、いえ、彼氏でも何でも無くて!
この歳で片想いなんてお恥ずかしい・・」
それを聞いた香山先輩はなぜか嬉しそうに笑って「やっぱり!そういう事よね」とお酒を口に含んだ
「それはとってもとっても、楽しいわね」