第24章 口止め料は甘い香り
「どこか行きたい所、あるかな?」
急ぎの書類を片付けてエリちゃんに向き直ると
消毒液の匂いを嗅いで顔を顰めた彼女が「これもちがう、」と呟いた
「何が違うの?」
「ううん、なんでもないの」
そう言うとリカバリーガールからもらったお菓子を目の前に広げ、カラフルなその包みを一つ一つ眺めていく
夕方まで何をして過ごそうかな、
エリちゃんを外へ連れ出したくても
私一人では万が一の場合に非力だと、校外への外出は相澤くんに禁じられている
「もし行ってみたいところがあったら
教えてほしいな」
学校の中なら校長室だって連れていってあげるよ!
冗談めかしてそう言った私をエリちゃんがチラりと見上げた
「・・お、おこらない、?」
「え?怒るわけないよ、遠慮しないでぜひ教えて?」
本当は学校の外に連れて行ってあげたいのだけどごめんね、そう付け加えると彼女は少し考えた後小さな声を響かせた
「あのね・・、せんせいと、めぐさんの
お部屋にいってみたいの」
「お部屋?そんな所でいいの?」
うん、と控えめに頷いて私の顔を伺っているその顔がとても可愛くて
「ふふ、じゃあこれから私のお部屋で
おやつパーティーしよっか!」
そう言うと彼女はぱあっと花が咲いたように笑った
「本当にいいの?」
「もちろん!エリちゃんならいつだって大歓迎だよ」
小さな手を引いて食堂へ寄ると「エリちゃんの為なら」とランチラッシュが素敵なデザートセットを持たせてくれた
「でも、みつげつな、だんじょのお部屋だって」
「え?み、みつ・・!?」
「ルミリオンさんが言ってたの、」
入ってはいけないお部屋だから、って・・、
私を見上げるその顔が不安そうに曇っていく
「ふふ、っあはは!」
通形くんが変なことを吹き込むのは日常茶飯事だけれど
相澤くんが聞いたら怒るだろうなぁ、そう思うと笑いが止まらない
「せんせいのお邪魔しちゃうとね、いきのね?
が止まるまで縛られるかもしれないって」
デクさんのお友達もいってたよ、そう真剣な顔で続けた彼女に目線を合わせた
「相澤先生は、そんなことしないよ?」
エリちゃんにはね、と付け加えて頭を撫でる
湧き上がる笑いをどうにか抑えてエレベーターへと乗り込んだ