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◉拗らせろ初恋◉【ヒロアカ】

第22章 紛れもなくヒーローの


「笑った顔が可愛い、怒った顔も可愛い、
 そんでもって凹んでる顔も可愛い、」

「ちょ、ちょっと待ってよ!」


それ全部「可愛い」だもん、ずるいよ!
そう言って真顔の白雲くんを止めると、揺れた彼の手からまだ小さいままの火玉が落ちた


「あ、私の勝ち」

「やめだやめだ、こんなの!」

楽しそうに笑った彼は、また次の線香花火に火を付ける





あんなに真剣な顔で勝利宣言をされて
私の知らない相澤くんを沢山知っているであろう彼に少し嫉妬した、なんて恥ずかしい


「でもちょっと焦っただろ?」

「ぜ、全然!」

私を見て満足気に笑う彼の手の先で、燃え始めたばかりの橙色は早速弱々しく揺れた




線香花火、残り少なくなってきたなぁ

相澤くんの分も残しておいて、とは言えず
容赦なく数を消費していく白雲くんの姿に苦笑が漏れる


「ん、めぐの」

ほら、と差し出された新しい紙縒りを受け取る
夜空はまた深くなり、幾つか明るい星がその存在感を増していた


「それ、最後の一本な!」






相澤くんに、会いたい




「火、付けねェの?」

そう言って不思議そうに私を覗き込んだ瞳がふいに逸らされると、突然白雲くんが勢いよく立ち上がった






「ショータ!」




「・・遅くなって、ごめん」


「ラウドクラウド、無事めぐチャンの身柄を
 確保したのでアリマス!」




相澤くんの姿に鼻の奥がつん、となるのはきっと線香花火のせい

少しの間離れていただけなのに、恋しくて恋しくて堪らない


「・・無事で、よかった」

余裕なく微笑んだ彼の表情に、大きな心配をかけていたことを痛感して申し訳無さが込み上げる

泣きそうな顔を見られたくなくてぎゅっと抱き着くと、驚いた相澤くんが控えめに私の肩を抱いた


「、大丈夫?」

「いっぱい捜させて、本当にごめんなさい」


「俺は平気、怪我も無さそうでよかった」

そう言って彼はタオルで汗を拭って微笑んだ



にやにやと私たちを見つめた白雲くんが「羨ましいなァ!」と笑うとゆっくりと歩き出す


「俺そろそろ帰るわ!あとは二人でごゆっくり!」


「白雲くん、ありが・・」


お礼を言おうと少し身体を離すと、肩を抱く手に力を込めた相澤くんがそれを制した



「・・また明日な」

「おう!」

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