第22章 紛れもなくヒーローの
彼女と逸れて数十分、一通り会場中を探し回ったがその姿は見当たらない
すでに白雲が見つけたのかもしれないな、そう思い合流地点を確認するがそこにも二人の姿は無くて
もう一周捜すしかない、大きくなる不安を何とか掻き消そうと態とらしい溜息をつく
どちらへ行くべきか辺りを見回すと、逆側の暗闇に一瞬、花火のような灯りが見えた
暗闇に目を凝らすとそこには見知った二つの人影
言ってた場所と逆じゃねェかよ・・、そう悪態をつきつつほっと胸を撫で下ろす
一段と暗くなったその場所を橙色の灯りが仄かに照らし始めた
汗を拭いその方向へ足を踏み出す
その瞬間、仲良さげに笑う声に嫌な胸騒ぎがした
「・・っ」
肩を寄せて線香花火をする二人の姿は、声を掛けるのが憚られるほどあまりにも絵になっていて
それを認識した途端、腹の底に黒い感情が溜まっていく
俺が先に見つけたかったのに、なんて八つ当たりもいいとこだ
白雲も彼女も頬を染めて下を向いて
照れ臭そうに笑って
なんだよ、その顔
何考えてんだ俺は
俺が来るまで二人で待ってただけだろ、それ以上でも以下でもない
そう何度も言い聞かせ、悶々とする気持ちを正気に戻そうと下を向いた俺の耳に
惚れ惚れするほど凛とした声が響いた
「俺の方が好きだって、わからせてやる」
はっきりと響いたその声は、普段のアイツからは考えられないほど真剣で
足が地面に張り付いて動かなくなる
白雲が、めぐを
そのまま真面目な顔で「可愛い」と連発するのを、焦った様子の彼女が止める
するとアイツはいつものようにおちゃらけて、その横で彼女が楽しそうにまた笑った
「それ、最後の一本な!」
アイツにそう言われ、新しい線香花火を握りしめた彼女が物憂げに火を見つめて
今、何考えてんだよ
俺のことか
それとも、白雲のことか
「火、付けねェの?」
そう聞こえた直後に近づいた二人の距離
黙っている彼女を至近距離で覗き込んだ白雲の姿に心臓が嫌な音を立てた
アイツ、まさか
考えるよりも先に足が動いてザッと砂利の音が響くと
こちらを向いた白雲がニィっと笑って立ち上がった
「ショータ!」