第22章 紛れもなくヒーローの
こんなことになるなら、大人しく景品抱えてればよかった・・
人で溢れる道を押されるがままに進む
呟いた声は喧騒に消えて自分の耳にすら届かない
どれくらいの時間が経ったのだろう、
相澤くん、きっと探してるよね
悪いことしちゃったな・・
賑やかな話し声に囲まれ、心細くて視線を落とした瞬間、
見覚えのある景品のぬいぐるみが
ちょん、と私の鼻先に触れる
爽やかに笑う彼の手でそのぬいぐるみは裏声を発した
「要救助者発見♩ お迎えにあがりました」
「白雲くん、!」
本当にごめんなさい、そう謝る私の手に水色のヨーヨーをぶら下げると彼は親指で自分を指しニィっと笑った
「俺たちヒーローだぜ?こんくらい朝メシ前!」
灯りから外れた場所まで私の腕を引いた彼は
この辺でショータと合流するんだ、線香花火でもやろうぜ!、
そう言って近くの屋台から借りたらしいライターを取り出した
「う、うん・・」
相澤くんは今も私のことを探している、そう思うと居ても立っても居られなくておろおろと辺りを見回す
「ショータなら大丈夫だって!」
どうせ待つなら楽しいことしてようぜ、な?
「大丈夫!」、白雲くんにそう言われると不思議と心が落ち着いていく
安心がそのまま心に届くような彼の声は、私にとって紛れもなくヒーローのそれだった
「そうだね、線香花火しよっか」
そう言って微笑んだ私に、その十倍くらいの笑顔が返される
「白雲くん、そういえば携帯は・・?」
「家!」
「ふふ、そっか」
線香花火がパチパチと音を立てて燃える
柳のように揺れる火花に見入る私を、先程からチラチラと確認する彼に思わず吹き出した
「もしかして、つまらない?」
「キレーだけど、俺やっぱ性に合わねェかも・・」
しゃがんで静かにするとか無理!
そう言って彼が勢いよく立ち上がると当然のように火玉は落ちた
「白雲くんは打上げ花火みたいだもんね」
「お、嬉しいこと言ってくれるな!」
山田くんは市販の手持ち花火って感じ、と呟くと
「勢いがあってうるせぇヤツな!」と彼が大声で笑った
私は好きだけどな、線香花火
控えめだけどこんなに綺麗で、儚げだけど強い
全力で火花を散らし続けるところも
見ているだけで心安らぐようなところも
なんだかまるで、相澤くんみたいだ