第22章 紛れもなくヒーローの
「ねぇ、もう次行こうよ・・!」
賑わう露店を片っ端から回り、数分前まで大層ご機嫌だった彼女が眉を顰める
白雲と俺が揃って足を止めた出店、当たり前のように始まった射的勝負の決着がつかないでいた
「俺が勝ったら、たこ焼きショータの奢りな!」
「俺が勝ったら、お前帰れよ」
「それはひどくない!?」
絶対帰らせてやるから待っとけ、と銃を構え狙いを定める
先週今週と連続で邪魔されてたまるか
「勝たなくても負けなきゃいいんだよな!」なんて意味不明な発言のもと、安定の自信を覗かせた白雲
その言葉通り、十数分経ってもなお決着はつかず
白雲が外せば俺も外し、俺が当てれば白雲も当てた
「本当、男の子って・・!」
駄菓子、線香花火、シャボン玉、そしてよく分からない人形が多数、すっかり呆れて溜息をついた彼女の手に景品が積み上がっていく
大きな袋を貰った彼女はそれらを乱暴に詰めると、俺と白雲の間にボン!と置いた
「もう私、先に行くから!」
そう言って膨れた彼女が歩き出す
「え、あっ、ちょっと待てって!」
直後、最後の一発を見事に外した俺の舌打ちが響いた
「よっしゃあ!ごちそーサマです!」
得意気に笑う白雲にたこ焼き代を手渡し、もう随分先に行ってしまった浴衣姿を目で捉えた時
盆踊りか何かを終えた人集りが、狭い通りに一気に流れ込んだ
つい先程まで見渡せていた景色が、あっという間に人で埋まる
「あれ?めぐどこ行ったんだ?」
早速たこ焼きを頬張る白雲を横目に、慌てて彼女の携帯を鳴らすと
数秒後、左手の巾着にその振動が伝わった
「まずい・・」
携帯も財布も俺か、
すれ違う人波を掻き分ける度に漂う酒臭さが、ますます俺を焦らせる
「手分けして探そうぜ!」
「そうだな」
広い会場ではあるが、そんなに遠くへは行っていないはずだ
じゃあ俺はこっち探すわ!と意気揚々と歩き出した白雲を呼び止める
「待て!お前、携帯は」
「家だな!」
「だと思った・・」
んじゃ見つかったらあの辺で合流な、そう言って灯りから外れた場所を指差した
「イエッサーッ!」
「個性使うなよ」
「わかってるって!」
なんかヒーローっぽくて楽しいな!
そう言って目を輝かせた白雲を尻目に、どうか彼女が無事でありますようにと祈った