第21章 苦手を克服できたのは
まあまあ、機嫌直せよ!そう言った山田が彼女に冷たい飲み物を手渡して
「あ、これ、新発売の」
「そ!めぐこういうの絶対好きだろ?」
「嬉しい、ありがとう」
受け取った彼女が、心底嬉しそうな笑顔を山田に向けた
はぁ、と大きな溜息がこぼれる
山田がいとも簡単に引き出したその笑顔、
彼女のその表情が見たくて、俺がいつもどれだけ苦戦しているか
”何でもできちゃうタイプ”なこいつの、こういう所が俺はやっぱり気に食わない
「相澤はコレ、どうせこういうのだろ!」
うるせぇよ、そう悪態をついて受け取ったそれはまさしく俺の好みの物で
こいつと恋敵になるのだけは絶対に御免だ、とまた大きな溜息をついた
彼女を駅まで送り部屋に戻ると、聞き慣れない音楽が爆音で流れている
「お前まだ居たのか」
「なァ、ちょっとココ来てみ?」
山田がポン、と俺のベッドを叩いた
「すっげぇめぐの匂いすっから!」
これは今晩ヤバいんじゃないの〜?
にやにやと笑ったその顔を引っ掴んで黙らせて
「お前な、なんで邪魔すんだよ」
わざとだろ、そう言って睨むと山田が口を尖らせた
「んーオレもめぐのコト好きになりそう、
って言ったら?」
「殺す」
「コワ」
そう言いつつ上機嫌に笑うその顔が俺を苛つかせる
「てかお前、彼女できたって言ってただろ」
「別れた、フラれた」
「はや」
「優しいひざしが好き、って言ってたのに
優しいのが耐えられない、だってよ
女のコって難しー・・」
珍しく溜息をついた山田に、転がっていた飲み物を渡すと「これオレが買ってきたやつ・・」とへらへら笑った
「案外、お前も大変なんだな」
「相澤クンとめぐちゃん見てたら
なーんか羨ましくなっちゃって、」
「で」
「コンビニ往復、全力ダッシュ」
「死ね」
ゴメン!と手を合わせた山田がコンビニの袋からチラシを取り出す
「来週の夏祭りは絶対行かない、二人の邪魔しないから許して!」
浴衣持って無いならオレの貸してあげちゃう!
「だから今晩泊めてェェ!」
「は、何でそうなる」
「一人になると寂しくて死にそう、
仲良くめぐの匂いがする布団で寝よ?な?」
「寂しくて死ぬか、俺に殺されるか選べ」