第2章 encounter
「あぁ、もう呼ばれちゃったよ。
あっという間だったなぁ…楽しかった。ありがとう」
龍也は呼ばれてしまった。
彼は私の目をじっと見つめて言った。
「また、来てくれる?」
「悪いけど、もう二度と来ないよ」
来るわけないじゃないか。
そう思いながらうっすら笑うと、彼はとても残念そうな顔をした。
まぁこれも営業なのだろうけど。
そして、名刺を渡してきた。
龍也という名前と、番号とメアドが載っていて、
そして背景は龍也がネオンの輝く街中で振り返っているイケメンスマイル。
「この名刺。貰って。よかったら連絡してよ。
別に君のこと、客にしようなんて思ってないから。」
「…ふ。どーだか」
「無理だってこの10分で充分わかった。
今度はお返しにそっちの店へ遊びに行かせてもらうよ」
彼は僅かに残ったグラスの中身を一気に飲み干してから、私のグラスにカチンとつけて、そしてウインクした。
あぁ。なるほど。
これがあなたの必殺技ね。
さすが夜の帝王。
普通だったらもう完全にコロッとイチコロだよね。
でも私たちの間だけでは完全にそれは無意味で、
全く意味を成さない。
それを、私もこの人も分かっている。
私もウインクで返事をした。
連絡をするかは…ちょっとまだわからない。