第11章 hesitation ■
いたいよ…
いたくないわけない…
でも…弱くなりたくない。
せっかく今までたった1人で強く生きてきたのに…っ
「…もういいよ、真珠。
もう諦めて、俺の…俺だけの女になって…」
「……龍也っ…」
「違う。俺は…隼人だよ…」
「…っ…隼人っ…私はっ…」
「うん」
嗚咽さえ止まらなくなり、
なかなか声が出ない。
無様な私をさらけ出している気がして
ますます自分が情けなくなった。
今まで必死で積み重ねてきた、
私を守ってきた壁が今、音を立てて崩れようとしていた。
「私はっ…隼人っと……」
「うん」
ゆっくりと背をさすられる。
「ずっと…っ!ずっと…一緒にいたいよ…!」
泣き叫ぶように発すると、
瞬時に唇を塞がれた。
鼻が詰まっていて息が苦しい。
パッと離れて、
目の前の彼の表情に鼓動が波打つ。
見たことがないくらい優しく眉をひそめ、
見たことがないくらい優しく微笑んでいた。
どこか泣きそうな顔にも見えた。
「… 真珠……愛してる…」
そんな真っ直ぐに感情を向けられたら…
壁が崩れないわけない…
「…っ…ずるいっ…」
嗚咽を漏らしながら震える私を
また抱きしめて隼人は言った。
「仕方ないよ…俺の中での真珠の存在が、いつの間にかこんなにも大きくなってて…。息するのも、俺が俺でいられるのも、全部、真珠のおかげなんだもん…」
愛してる……
ともう一度耳元で囁いてから
ゆっくりとまた私をベッドに押し倒した。
覆いかぶさっている隼人の目からは、涙が溢れていた。
「……限界なんだ…」
消え入りそうな儚いその声が降ってきた瞬間、
私の目からも涙が溢れた。
どちらか一方が、もう本気で限界ってなったら、
全てを捨てて、どこか2人で遠くへ行く。
……道連れってこと?
そうだね。
いいよ。じゃあ、合言葉は"限界" ね。
今までの数々の想い出が蘇ってくる。
死に物狂いで努力してきたこと、辛かったこと、悲しかったこと……
そうだ……私は……もうずっとずっと前から……
「…っ……私はもう…とっくに限界だったよ…っ…」
隼人が瞬時に私を抱き締めた。
私も力強く抱き返す。
私たちは、全てを捨て去る覚悟を決めた。