第1章 desire
夜の街…
金と欲望が1番色濃く渦巻く黒い街。
「お疲れ様でした!レオナさん!」
「レオナさんお疲れ様です〜!」
「おつかれっしたぁあ!!」
口々に言う同僚の嬢たちやボーイに、私は上辺だけの笑顔を向けてから踵を返す。
私専用の送迎車のドアを開けて待っているボーイの元へ向かい、ドレスにコートを羽織ったままの格好で車内に乗り込んだ。
はーーっと長い息を吐いてからスマホを取り出す。
116件のメッセージに、28件の着信履歴。
人物を確認しないまままたバッグに放り込み、ふと窓の外を見ると、車が発車したのと同時に頭を下げて見送る何人ものボーイの姿が流れて行った。
疲れた…。
なにもかもに…。
毎日のこの繰り返しに…。
こんな日々に意味はあるのか?
毎日毎晩、休むことなく客の機嫌取りをしたり、逆に機嫌を取られたりなんかを繰り返している、こんな日々に…