第9章 resist
そして龍ちゃんは私の元に来てしゃがみこんで、
今までとは別人のように優しく微笑み、頭を撫でてから言った。
「部屋に戻ってな。」
そう言って、ゆっくりと立ち上がらせる。
「え…で、も、」
「いいから。あとは任せて。
これ以上、こいつと同じ空気吸ってたくないだろ」
懸命に首を振ったけど、
彼に抱き締められた。
「大丈夫だから…」
そう耳元で囁かれて、離れていく体…
「ちゃんと…戻って…きて…っ…」
気がつくと私は涙を流していた。
龍ちゃんの、眉を下げて悩ましく笑う笑みが滲んで見えなくなってくる。
「うん。大丈夫、すぐ戻る。
レオナの部屋にね…。」
私の頬に手を這わせ、親指で涙を拭ってからまた笑って、
「さぁ、行った行った。
ちゃんと温かくして寝ろよ?」
背中を押された。
最後に見えた、いつもの満面の笑み。
寝られるわけないじゃん…
バカじゃないの…
心の中でそう呟きながら
振り返らずにマンションの中に入った。
どうしても、
振り返ることが出来なかった。
早く、早く帰ってきて…
お願い…だから…
ただそれだけを祈って。