第8章 cruelty ■
ーレオナsideー
私たちは何事も無かったかのように
レストランのテラス席で夕食を食べた。
夜だけど、季節的にも外のテラスはとても気持ちがいい。
「お客さん以外との外食なんて久しぶりすぎるな…」
「うん、俺もー。なんか不思議な感じ。」
「・・・」
「・・・」
先程のこともあってか…
さっきからなんとなく気まずい。
ていうか…
よく考えたらさっきのなんだったんだろ?
なんで私はこの人と…き、キスなんか…
仕事の練習だとしても普通しない。
龍ちゃんはどう思ってるんだろ?
さっきから本当に何事も無かったかのように
超フツーだけどさ…
やっぱりこの人にとってはなんの抵抗もない練習だったんだろうか?
だとしたら、よくあんなに濃厚なキスが普段から他人とできるな……
思い出すだけで顔が熱くなる。
この男の色気とテクであんなキスなんかされたら、大半の女性はイチコロだ。
カチャカチャと鳴る食器の音がやけに大きく響く。
どういうつもりだったかなんて
聞けるわけないし、聞くのがなんか怖い。
少なくとも私は、仕事の練習に付き合ってあげていたつもりはない。
発言は冗談だと思ってたし、ましてキスの練習台になんて……
でも龍也は……この男は……
なんの躊躇もなく、なんの感情もなかったのかもな……
つい忘れがちになるけど、れっきとしたホストだし。