第7章 situation
「遊園地の夜景に、観覧車の中の男女。
これってそういうシチュエーションだよね…」
彼の玲瓏な瞳が外のネオンに揺れてギラギラしている。
「…ロマンチックな幻想ってやつ?」
「そう。このまま奪いたくなるってやつだよ…」
「は?なにを?」
彼は目を細め、私の頬に指を滑らせながら静かに言った。
「唇…を…」
「っ…」
言葉を発する前に、龍ちゃんは私に唇を重ねていた。
微動だにできないでいる私の後頭部に手が滑り込んできて、
そのままグッと押さえられたかと思えば
唇が角度を変えて啄むように音を鳴らした。
少し離れて、目と目が合う。
観覧車の中だから、
メガネも帽子もとってしまっていた。
していればよかったかもしれない。
そうすれば…
こんなことにはならなかったかも…
しれないのに……。