第2章 だいたい七年後
「あ、はい。
………えーーーっと」
やばい、突然名前を呼んでしまって
明らかに困らせている。
「あ、突然すみません!
私、北一だったんですけど、岩泉先輩の名前が聞こえて、
あ、岩泉先輩だ。って思って!
つい、話しかけてしまいました………スミマセン」
言葉が増えるたび、私の頭はどんどん項垂れて
そしてそれと同時に視線も下がる。
最後の方は蚊の鳴く声
「あーーーー。えーーーっと」
突然、北一でした。なんて言われても困るよね。
岩泉先輩は私のことは知らない。
「本当にスミマセン。
先輩は覚えてないと思いますが、実は卒業式の日に
先輩にボタンをもらいました………」
………こんな自己紹介をする日が来るとは。
私の人生で最悪な瞬間トップ3に入る自信がある。
「………あぁ!えーーーーっと、、ちゃん?」
「え?!」
突然名前を呼ばれて、思わず勢いよく顔を上げる。
「あ、ごめん。名札」
岩泉先輩の視線の先には
私の左胸に付いている、バイトの名札。
どうしよう。
岩泉先輩に名前を呼ばれてしまった。