第10章 初めてばっかりの日
「………スマン。我慢、できなかった」
目が、合うんだけど
今までで一番、近い距離
「おい。つねんな」
これは現実なのか?と確認するために
また自分のほっぺたをつねった私は注意を受ける。
そして、たった今手を離したところに
岩泉先輩の手が触れる。
その手は冷たかったんだけど、
やっぱりそこから、熱が広がる。
「もうずーーーっと、心臓飛び出しそうでしたけど
私、先輩と一緒にいたら
心臓止まっちゃうかもしれません」
本当に。
自分で心臓の音が聞こえるくらい
どうしようもなくうるさい。
「それは困るな」
「どうしましょう………」
「でも俺、心肺蘇生の知識あるし。
その時は任せろ」
真顔で言った後、
少年みたいにニッと笑うのは
私がよく知っている、
ううん。一方的に見ていた、か。
だけど、私が大好きな岩泉先輩。