第10章 初めてばっかりの日
ヤバい
「ってオイ」
初めての "デート" という言葉に
心臓が飛び出しそうになって
思わず立ち止まってしまった私に声がかかる。
「………スミマセン」
慌てて少し先の岩泉先輩の隣へ
「なに?どうした?」
「あ、いえ。岩泉先輩から "デート" という単語が出てきて、
さらにそれが私に向けられたものだと思うと
心臓が飛び出しそうになりました」
「なんだソレ」
ものすごく笑われてる。
いや、気持ち悪いっていう自覚はある。
ただ、本当にそうなんだもん。
バイト終わりに岩泉先輩が待っていてくれて、
そして一緒に帰れること。
それにはようやく慣れてきた。
ただ "初めての何か" が起こるたび
私の心臓は毎回飛び出しそうになる。
そしてそれを報告して、笑われる。
「どっか行きたいとことかある?」
「………岩泉先輩と一緒ならどこでもいいです」
「お前なぁ。でもまぁ、考えとくわ」
「よろしくお願いします」
岩泉先輩が私とのデートを考えてくれるとか。
ヤバい、
やっぱり心臓がもたない。