第1章 プロローグ
「これでいいか?」
「え、あの。………いいんですか?」
まさか上から2番目のボタンをもらえるとは思っていなくて
声だけでなく、身体も震える。
「おう」
そう言って差し出されたボタンを両手で受け取って
思わず胸の前で握りしめた。
「えーーーっと、名前………?」
「あ、えっと。です。です」
「バレー、応援に来たり、してくれてたんだって?
友達に聞いた………」
たぶん、岩泉先輩は饒舌ではないと思う。
だけど、もう卒業なのに
突然現れた、わけわからないだろう私に
こうやって話しかけてくれて。
なんならわざわざ名前まで聞いてくれて。
その優しさに、改めて
この人のことを好きになれてよかったなって思った。
そして、やっぱりカッコいい
そんな岩泉先輩を好きになった自分が
なんだか誇らしかった。
「実は、応援に行ってました。
先輩、高校でもバレーするんですよね?
これからも応援しています」
「おう。ありがとう」
ずっと伝えたかった "応援しています" という言葉
ただ、それを伝える手段も機会もないと思っていたんだけど
こうやって、伝えることができて。
そしてその時、初めて
最初で最後、
岩泉先輩と目が合った。