第7章 帰り道
地下鉄を降りて、駅の外に出て
「じゃ、お疲れ様でした!」
岩泉先輩に挨拶をする。
「………家まで、送ってく」
この前初めて飲んだ時は、ここでさよならした。
だから「お疲れ様でした!」って伝えたのに
まさか「送ってく」って返ってきて。
「え?!」
あまりにもびっくりしすぎて
思わず先輩の顔を見上げる。
「あ、すまん。嫌ならここで。じゃ、お疲れ」
「えぇ?!嫌じゃ、ないです!
けど、いいんですか?先輩反対なのに………」
岩泉先輩と私は、駅から真逆
「一人で帰るの危ねぇだろ」
「いや、バイト後はいつも一人なので………」
「嫌なら嫌ってハッキリ言え。
………てか言って」
「いや、だから全然嫌ではなくって!」
つい、食い気味に
でも、いいのかな?って。
やっぱり思っちゃう。
「じゃあ、ほら。行くぞ。
ってだいたいしかわかんねーからちゃんと教えろよ?」
「………はい」
私の家の方向に
先に歩き出した岩泉先輩を小走りで追いかける。
「てか危ないでいえば、この前も送っていけばよかった。わりぃ」
「あ、いや。慣れてるし。大丈夫です!」
どうしよう。
いつもの帰り道、隣に岩泉先輩がいる。
私の人生の幸せ貯金は
この半年で使い切ってしまうのでは?
と、ちょっと心配になる。
だけど、それでもいいと思えてしまうほど幸せだ。