第7章 帰り道
嬉しすぎて、
ドキドキしすぎて
言葉が続かない。
「でも岩泉さんと会うんでしょ?」
「あ、うん」
「さん!メイクもなおしましょ?!
メイク道具あります?!」
「あ、あんまりないかも………」
バイトのためだけにメイク道具は持ち歩かない。
………ウン
こういうところ。
「これ!使ってください!
あと髪の毛どうします?!とりあえずとかしましょ?!」
「まじでスミマセン。ありがとうございます。お借りします」
バイトに来る前よりも念入りにメイクをなおす。
仕上げに、バッグに唯一入っていた
お気に入りのリップを塗って
「どうかな………?」
鏡の角度を変えながら
「バッチリです!さん可愛い!」
「髪の匂い、どうかな?」
「大丈夫ですよ!だって私のですから!」
ね?っていう言葉は
なによりも頼もしいかもしれない。
「岩泉さん、どこかで飲んでるんですか?」
「あ、いや。なんか一緒に帰ろうって言われて」
「えーーーーー?!」
「だからここの前で待ってるって」
「まじですか?!えーーーーー!
じゃあ早く行かないと!」
「あ、うん」
言葉にすることでまた
いったん、少しだけ落ち着いた心臓が騒ぎだす。
最後に全身鏡の前で確認をするんだけど
………スカート履いてくればよかった。
でもまぁ、コートでほぼ隠れるか。
だし、岩泉先輩は私の服装なんて興味ないか。
そうだ、大丈夫。
ウン、興味ない。