第6章 初めて二人で
本人に、こんなことを言える日が来るなんて。
だけど、本当に
そのくらい仲良くなれた。
そんな私の頭を
ぽんぽんって。
岩泉先輩からすると、そこまで意味はない
というか、恋愛的な感情がなければ
ただのコミュニケーションなんだろうけど
未だに一方通行の恋愛感情を持っている私には
刺激が強すぎた。
少し前まで、たったひとつのボタンが宝物だったけど
私の中の宝物がどんどん増えていく。
形に残るものではないけれど
それ以上に大切な、
こうやって時間を共有できるということ。
そして、私にだけむけられている
その言葉と視線と表情
付き合いたいだなんて、烏滸がましいことは考えない。
考えてはいけない。
今の "中学の時の後輩" というポジションを
これからも大切にするし、それだけで十分。
その日の帰りは、地元が一緒だから
当たり前ではあるんだけど
最寄り駅まで一緒に帰れて。
………岩泉先輩と一緒に
地下鉄に乗る日が来るなんて。
地元が一緒って素晴らしい。
とにかくその日が、私の中で一番の日になった。