第6章 初めて二人で
いつもは岩泉先輩は座って
私は立って話すんだけど
岩泉先輩の隣に、並んで座った。
カウンター席だったから、
テーブル席よりさらに距離は近い。
岩泉先輩が中学を卒業した後、
高校のこと、大学のこと、
そしてバレーのことを話してくれた。
「実は私、高校の頃も岩泉先輩試合見に行ってました。
ストーカーみたいですみません」
あ!でもストーカーじゃないですよ!って
最後に付け加えさせてもらったけど、
「まじで?知らなかったけどすげー嬉しいわ」
そう返してくれて、
岩泉先輩への好きがまたひとつ増えた。
まあ、ここまで仲良くなれた今はいいとして、
高校の頃なんて、ほんと学校も違うのに
応援に行ってました。なんて。
冷静に考えたら
ものすごく気持ち悪いと思う。
だけど、先輩はそんな感情は見せずに
そう、言ってくれた。
そして
「どの試合見てくれたかはわかんねーけど、
でも最後まで、全部勝って終われなかったからな」
岩泉先輩たちにはライバルと言われている学校があった。
バレーは岩泉先輩たちの試合しか見たことがなかったけど、
白鳥沢のエースと呼ばれていた人は
私が見ても "強い" と思った。
それでももちろん
一番カッコ良かったのは岩泉先輩なんだけど、
その先輩にそんなことを言わせてしまって
少し、後悔した。
「ん?どうした?」
勝手にしゅんとしてしまった私に気づかれて
「あ、いや。あの、
私はバレーはあんまりよくわからないし、
たくさん見たこともないんですけど。
だけど、中学校の頃も、高校の頃も。
岩泉先輩がいちばんカッコよかったし、先輩のプレーが好きでした」