第5章 大人の事情※
「あ!それと夜は控えめにね!」
「声が大きいです……!!」
かあ、と真っ赤になると
博士がニンマリと笑って去って行く。
とんだセクハラ上司である。
嵐が去ったようにしん、と静まると
おずおずと影に二つ赤い目が浮かぶ。
「……ゲンガー、聞いてたの」
「ゲ……」
意志疎通……、ポケモンは
どれだけ人語を理解しているのだろうか。
少なくとも複雑な会話さえ要求しないなら
コミュニケーションは
ほぼ成り立っているように感じている。
「ごめんね、……私がしてることは
いけない事だからちゃんとしないとって
思ったんだけど……」
「ゲゲ!ゲンガッ!!」
ガシ、と間を置かず抱き締められる。
じわりと視界が滲んで抱き返した。
人間とポケモン、
いまや神話の世界の与太話だとしても
二人で幸せになれるのだろうか……。
END.