第12章 【一筋の涙】
サラリと復讐を認めたハーマイオニーに、クリスは突っ込んだ質問をした。
「やっぱりロンを許す事は出来ないか?」
「許すも許さないも、あの人の恋人はラベンダーでしょ?私の入る隙は無いわ」
「誰が恋人なんて言った?友達として、だ」
そう言うと、ハーマイオニーはポッと赤くなった。まんまと策に嵌ってくれたと、クリスは端整な口の端を持ち上げた。
「ええ……ええ、そうよ。許せないわ。人の気持ちを知っていながら、あてつけにラベンダーと付き合うなんて。それもあんな四六時中ベタベタベタベタ……」
「まあ、その点に関しては擁護しないが……ロンは妬いてるんだ、ハーマイオニーがクラムとキスをしたから」
「キスしたなんて、誰が教えたの!?」
「ジニー」
クリスが素直に答えると、ハーマイオニーはガックリと肩を落とした。その様子から察するに、色々身に覚えがあるのだろう。
しかしクリス個人としては、ジニーにだけ秘密を打ち明けた事がショックだったので、これに関してはあえてフォローはしなかった。
「そうね、そうだわ、確かにキスしたわ。でも本当に軽くだし、もう昔の事でしょう?」
「その昔の事が許せないみたいだな」
「でも、貴女だって誰かとキスした事くらいあるでしょう?」
「……ッッ!!?」
まさかのボディブローに、クリスは言葉が出なかった。
い、言えるわけがない。まさかよりによって『ロンとキスをしたことあります』だなんて。
いくら人命救助のためだったと説明したところで、それでハーマイオニーが納得してくれる確率は未知数だ。それに、ロンがこの事実をどう捉えるか分からない。最悪、一生4人で集まる事が出来ない可能性もある。
クリスが黙っていると、そこに天の助けかハリーが現れた。後ろにはルーナもいる。
ハリーは真っ黒のドレスローブに、緑のタイを付けている。相変わらず髪はクシャクシャだが、それがハリーらしかった。
ルーナは銀のスパンコールが付いた綺麗なローブを着ている。カブのイヤリングもコルクのネックレスもつけていないし、片手に『ザ・クィブラー』も持っていなかった。
「やあ、2人とも。楽しい時間を過ごしてる?」
「そんなわけ無いだろう」
「ははは、だよね」
「こんばんは、ルーナ」
「うん、こんばんは」