第11章 【報復と復讐】
観客席は超満員で、クリスはきっとこれもハリーの『選ばれし者』効果だろうと勘ぐった。事実、試合に関係のないレイブンクローやハッフルパフの生徒も大勢来ていたので、クリスはハーマイオニーを探すのに要らぬ苦労をした。
「やあ、ハーマイオニー。探したぞ」
「クリス、珍しいわね」
「自分でもそう思う」
素直に認めると、ハーマイオニーが可笑しそうに笑った。
ハーマイオニーの笑った顔を見るのは久しぶりだったので、それだけでも試合を見に来た価値があると思った。
ハーマイオニーの隣に腰掛けると、直ぐに試合が始まった。クリスはあまりクィディッチの試合を見ないから確かな事はいえないのだが、今日のグリフィンドールのプレイは良い様な気がした。
「なんだ、勝ってるじゃないか。ハリーは心配性だな」
「……勝って当たり前よ。ハリーはロンに『フェリックス・フェリシス』を使ったのよ」
「スラグホーン先生から貰った、例の幸運の液体か?」
「ええそうよ。私見たの、ハリーがロンのかぼちゃジュースに何かを入れたのを。間違いないわ!」
まさかと思ったが、実際チームは勝っているし、ロンはキーパーとして立派にゴールを守っている。それに良く見ると、スリザリンのシーカーであるドラコの姿がなかった。
これはもう勝ったも同然だろう。そういう意味では、確かにちょっと出来すぎているかもしれない。
試合は時間が経てば経つほどグリフィンドールが有利になり、最後はハリーが見事スニッチをつかんで終了となった。
フーチ先生がホイッスルを鳴らすと、ハーマイオニーはすぐさま選手控え室へ飛んでいってしまった。
慌ててクリスが後を追ったが、如何せんクリスの足が人並み以上に遅かった所為で、控え室に着いたときには喧嘩が勃発する寸前だった。
「私ちゃんと見たのよ!ハリーがロンのジュースに薬を入れるのを!!」
「僕は入れてない」
「嘘つかないで!」
「嘘じゃないよ、ほら」
ハリーはニヤッと笑って、ローブからしっかり封のされた小瓶を取り出した。小さなビンの中には、金色の液体がたっぷり入っている。
「ハーマイオニーが見てるのを知ってて、入れる振りをしただけだよ」
「それじゃあ、僕……僕がゴールを守ったのは……」
「もちろん君の実力だ。分かっただろ相棒、君はやれば出来るんだ」