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ハリー・ポッターと夢幻の探究者

第11章 【報復と復讐】


「グレインの名を持つ娘よ、今日はマナの流れに一層の乱れを感じました。何かありました?」
「ええ、まあ……ちょっと」
「迷いごとがあると、体内を廻るマナにも影響します。星を読むなら、迷いごとは捨てた方がいいでしょう」

 そんな簡単に捨てられたら苦労しない。とは言えず、クリスは「頑張ります」とだけ答えた。フィレンツェは深い青い瞳でジッとクリスを見た後、ゆっくりと夜空を仰いだ。

「しかし残念ながら、その迷いは直ぐには捨てられません。時が来るまで、彷徨う運命にある」
「それも星のお告げですか?」
「否、これは天命です。星の巡りが貴女に迷いを与えている。しかし辛いからと言って、投げ出してはいけません。諦めてもいけません。ただ時が来るのを待つのみです」

 相変わらず捨てろとか、投げ出すなとか、言っている事がちぐはぐで良く分からなかったが、何かを案じてくれているのは分かった。
 クリスはフィレンツェに礼を言うと『占い学』の教室を後にした。


 翌日はクィディッチの試合の日だった。対戦相手はスリザリンで、クリスが少し遅れて大広間に行くと、そこは既に野次とにらみ合いの戦場と化していた。
 きっとドラコ辺りが、また下らない挑発をしてくるのだろうと待ち構えていたが、その予想は大きく外れた。

 実は最近、ドラコの影がめっきり薄くなっていた。『魔法薬学』の授業中も、プリンスの教科書を使ってハリーが素晴らしい成績を修めても嫌味のひとつも言わないし、クリスと廊下ですれ違っても視線1つ合わせない。
 遂に愛想をつかされたかと思うと、ホッとする反面少し寂しくもあった。

 殺気が飛び交う中、クリスが優雅な朝の一杯を飲み終えた頃には、もう生徒の殆どが観客席に行っていた。
 試合にも寮杯にも興味のないクリスは、このまま図書室で本でも漁りに行こうか考えた。
 だが昨夜の「投げ出すな」というフィレンツェの言葉を思い出し、不本意極まりないがのろのろとグラウンドに向かった。
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