第11章 【報復と復讐】
そんな日が続いたある夜、クリスは談話室で1人宿題をしていたハリーにお願いをした。
「ハリー、頼みがある」
「何?」
「ロンをキーパーから降ろ――」
「無理」
全て言う前に却下された。そんなにクィディッチが大事かと聞くと、何のためらもなく「うん」と即答されてしまった。
駄目だ、これだから男は頼りにならない。しかしだからと言って、他に相談できる女友達もいない。
そう思っていたら、不意にルームメイトであるラベンダーが話しかけてきた。
「ねえクリス、貴女ってロンをどう思っているの?」
「どうって、友達に決まっているだろう」
「それだけ?」
「当たり前だ」
「そう、良かった。生徒達の間でちょっと噂になっていたから気になって」
それは多分、ロンが自棄を起こして抱きついてきたのが原因だろう。クリスが全力で否定すると、ラベンダーは満足そうに笑って談話室を出て行った。
「さて、私もそろそろ行くか」
「こんな時間にどこに行くの?」
「『占い学』だよ。フィレンツェ曰く、今日の夜は星が静かで運勢を読み易いらしいぞ」
4人の中で『占い学』をとっているのはクリスだけだったので、クリスは1人で談話室を出て『占い学』の教室に向かった。
それにしても、まさか自分とロンの間でそんな噂が立っているとは……。こう言っては何だが、ロンに異性としての魅力を感じた事は一切ない。そういう点では、まだハリーの方が納得できる。
今は良い友人とはいえ、一応ハリーは物心ついた頃からの憧れの人であった。だがロンにはそれらの要素が一切ないのだ。
良い意味では「照れ」がない分、ハリーよりも距離感が近く、1番の男友達と言える。
「さあ、お入りなさい。今宵は静かな夜だ」
『占い学』の教室では、フィレンツェが床に生えた緑の草の上で座って待っていた。生徒達は教室に入ると、いつも通り楽な体勢で天井の星を見上げた。
クリスも草の上に寝転がって星を眺めたが、ロンとの噂をもしハーマイオニーに知られたらと思うと、ハラハラしてちっとも集中できなかった。