第11章 【報復と復讐】
その日は朝からあまり良い気分ではなかった。前日の夜にロンが妹と喧嘩した挙句に自棄を起こして人を巻き込んだ所為もあったし、単純に夜遅くまで本を読んでいて寝不足な所為もあった。
とにかく憂鬱な気分のまま大広間に下りていくと、本物の空を映す天井もどんより曇り空だった。
「お早うクリス、今日はいつもより遅くない?」
「ちょっとな。多分誰かさんの所為」
「あー、はいはい。僕が悪かったよ」
「え、何?何かあったの?」
「チッ……会話に入ってくんなよな」
その時、確かに聞こえた。ロンの不機嫌な舌打ちと台詞が。急いでハリーの方を見ると、うな垂れてフォローする気も起き
ないみたいだった。きっとクリスが降りて来るまで、ずっとこんな調子だったのだろう。しかたなく、クリスは笑顔が凍っているハーマイオニーに話しかた。
「そうだハーマイオニー、『呪文学』の実技で聞きたい事があるから、食事が終わったら少し時間良いか?」
「え?ええ、もちろんよ!そうだわ、どうせなら皆でやりましょう!」
「ハァ……勝手に決めんなよ」
胸の中にあった不安が、今確信に変わった。――嗚呼、これは嵐の前触れだ。
それを証拠に、その後もハーマイオニーが何か言う度、ロンは聞こえよがしに舌打ちをしたりため息を吐いたりした。
そのお陰で、食事が終わると同時にハーマイオニーは早々に席を立って大広間を出て行ってしまった。
「ロン、恨むぞ」
「何で?僕は悪い事はしてない」
「してるだろう!ハーマイオニーが何をしたって言うんだ?」
「クラムとキスした」
昨日「誰と誰がキスしたって関係ない」とか言っていた人間は誰だ?と言ってやりたかったが、それはハリーによって阻止された。
ハリーは「試合の前にこれ以上ロンの機嫌を損ねられない」と主張したが、クィディチ嫌いのクリスにはどうでも良い事だった。
むしろ何の理由もなく、好意を寄せている相手からいきなり蔑ろにされたハーマイオニーの方が可愛そうで仕方がなかった。
深く傷ついたハーマイオニーは、ロンが傍にいる時はクリスにさえあまり話しかけなくなった。