第10章 【悩めよ若人】
「スラグホーン先生!実は私、イエーガー博士の大ファンなんです!!」
「おお!!そうか、でも体調が――」
「医務室に行って元気爆発薬をもらってきます。先生、後で夕食会にお伺いしても宜しいですか?」
「もちろん構わんとも!待っているよ」
スラグホーン先生の後ろで、ハーマイオニーとネビルが宇宙人を見るような目でクリスを見ていたが、この際気にしてなんていられない。
みんなが廊下を曲がって見えなくなったのを確認すると、クリスはその場で密かにガッツポーズを決めた。
こうしてスラグホーン先生のお気に入りたちが集まる『スラグ・クラブ』に仲間入りしたクリスだったが、唯一気がかりなことがあった。そう、ロンのことだ。
今のところロンが夕食会に呼ばれたことはないし、その予定もない。
きっとまた拗ねるだろうなと予想していたクリスだったが、何故かロンの顔は明るかった。
「ロン、怒ってないのか?」
「何が?」
「いや、私がスラグホーン先生の夕食会に行っても……」
「ああ!まあ……その、良いんじゃないかな?別に」
おかしい、絶対におかしい。今までのロンだったら絶対に拗ねていたはずだ。気になってハリーに耳打ちすると、ハリーも声をひそめて教えてくれた。
「あのね、スラグホーン先生が開くクリスマス・パーティがあるらしいんだけど……それにハーマイオニーがロンをパートナーにするつもりだって言ったんだよ」
それを聞いて、クリスは自分の頬が持ち上がるのが分かった。
そうか、そうか……ついにこの日が来たのか。知らない間に2人とも随分と素直になったものだ。フフフ……まあいい、とにかくめでたいことだ。
クリスがニヤける口元を隠しきれないでいると、ハリーが重いため息をついた。
「何でため息なんて吐くんだ、ハリー?」
「だって2人が喧嘩したら、とばっちり食らうの僕達じゃん」
「それは……まあ、考えないようにしよう」
確かにハリーの言うとおりだったが、やっとここまで来たのだ。早々喧嘩なんて起こらないだろう。
――などと思っていたら、期待を裏切らず起こしてくれた。それも今までのものと比べ一番厄介な代物を、だ。