第10章 【悩めよ若人】
そしてトム・リドルは、戦利品として自分が虐めた子供達の宝物を集める癖があったと話した。ダンブルドア曰く、それがとても重要な意味を持つと。
また、自分の『トム』という凡庸な名前を嫌い、常に特別な存在であることを望んでいたことも重要だと言った。
「確かに、自分の名前をアナグラム化して、自らヴォルデモート卿を名乗るくらいだからな」
自己愛もそこまでいけば称賛ものだよ、と思わずクリスはその場で皮肉った。
校長室で見たこと全てを話しても、ハリーの表情は曇ったままだった。
「大丈夫?ハリー、少し休んだら?」
「休まなくても平気だけど……これって、結局何の役に立つの?」
「すっごく役に立つわ!だってヴォルデモートのことを知らなければ、弱点なんて知りようがないじゃない!!」
ハーマイオニーは力をこめてそう言ったが、戦利品を集めることが好きなことと、自分を特別に見せたいことのどこが弱点に繋がるのか、ハリーもクリスもさっぱり分からなかった。
夏休みの時、ハリーだけがダンブルドアの個人授業を受けると聞いて不公平だと思ったが、実際ハリーから話を聞いてしまうと、あまり得なものとも思えなかった。
そんなことよりも、ついにクリスに差し迫った問題が勃発した。
それはいつも通り図書館から本を借りて帰る途中のことだった。マクゴナガル先生に呼び止められ、クリスは一瞬自分の落度を探したが、今は『変身術』のクラスを受けていないので、特別注意されることはないはずだと安心した。
「先生、何の御用ですか?」
「ミス・グレイン。貴女の進路のことでお話があります。ここではなんですから、私の部屋へ来なさい」
進路と聞いて、クリスは思わず背筋を伸ばした。
いったいどんな話なんだろう……不安と期待がない交ぜになって、胃のあたりがぐるぐるした。