第10章 【悩めよ若人】
翌日、ケイティが呪いをかけられて聖マンゴ病院に搬送されたことは全校生徒の知ることとなった。これにより、ホグワーツも安全ではないと思った親達が、子供を連れ戻そうと、大量にフクロウ便を送ってくるようになった。
ある朝、またまたクリスが図書館に寄ってから大広間に行くと、何百羽というフクロウたちが手紙を届けに来ていた。
もちろん親のいないクリスには関係のない話だったが、同じく孤児のハリーに手紙が2通も着ていたことに驚いた。
「お早う。ハリー、誰からだ?」
「分かんない、ひとつはフローリッシュ・アンド・ブロッツからだけど……」
ハリーは包みを破り、中から『薬草学』の新しい教科書を取り出した。そしてもう1つ、淡いブルーのインクで書かれた手紙を開けると、あっと声を上げた。
「ダンブルドアからだ。来週の月曜の夜、また校長室で待っているって」
「良かったじゃないか」
「うん。……う~ん」
「何か煮え切らない返事だな」
「だって……何の役に立つのかよく分からないし」
その言葉通り、月曜日になって再びダンブルドアの個人授業を受けて帰ってきたハリーは、凄く複雑な顔をしていた。
「何があったんだ、ハリー?」
「また『憂いの篩』で記憶を見たんだけど……」
ハリーは校長室で、今度は若き日のダンブルドアの記憶を見たと話してくれた。
それはダンブルドアがまだ校長ではなく一教師だった頃、孤児院にいる幼きトム・リドルをホグワーツに入学させる為に訪ねた時のものだった。
若きトム・リドルはその頃から既に、人を掌握する術を知っていたらしい。まだきちんと魔法を学んでいないというのに、自ら魔力をコントロールし、それによって孤児院で暮らす子供達とは一線を画した存在だったという。それを聞いて、ロンは身震いを起こしていた。
「なんかやだな、『例のあの人』の子供の頃なんて……」
「それで、ハリー?それからどうしたの?」
「そらから――」
ダンブルドアが魔法学校から来たと聞いて、トム・リドルはいぶかしむ事無くそれを受け入れたという。
生まれた時から魔法界で育ったクリスには分からない感覚だが、普通は魔法と聞いても直ぐには信じられないものだとハリーは言った。