第10章 【悩めよ若人】
「ドラコが犯人ねえ……まあ、考えられなくはないけどな」
ケイティ・ベルの身に起こった恐ろしい事件から約1時間後、談話室に戻ってきた4人は、それぞれ暖かい格好に着替えて暖炉前のソファーに身を沈めていた。
暖炉の薪がパチパチと爆ぜる音を聞きながら、クリスはハリーの推理を再び口にした。
4年前、クリスとハリーがボージン・アンド・バークスで偶然会ったあの日、ドラコがあの首飾りに目をつけていたとハリーは言った。
そして今年、同じ店でドラコと店主のボージンの会話を盗み聞きしていた内容と照らし合わせて考えると、つじつまが合うというのがハリーの主張だった。
しかし、そんなハリーの主張は既にマクゴナガル先生が論破していた。なんとドラコは『変身術』の宿題を2回も続けて忘れてきたという理由で、マクゴナガル先生の罰則を受けておりホグズミードには行っていなかった。
ロンとハーマイオニーは、それを聞いて「ドラコ犯人説」を否定したが、ハリーは何か抜け道があるはずだと主張した。クリスも、白に限りなく近いが黒と言えなくもないという、凄く中途半端な立ち位置に納まっていた。
「それより、あの首飾りはいったい誰に届けられる予定だったのか気にならない?」
「僕かな?」
「私かもしれない」
「ダンブルドアじゃない?」
「ハリーもクリスもずっと『三本の箒』にいたし、ダンブルドア先生はず~っとお留守です!」
ハリー、クリス、ロンの短慮な回答に、ハーマイオニーはイライラしたように答えた。そう、ハーマイオニーの言うように、肝心のダンブルドアはここのところ城に滞在している様子がなかった。
「もういいわ、この話は止めましょう。私、『数占い学』の宿題をしなくちゃ」
「私も、今朝借りた本を読むとするか。2人はどうする?」
「僕、無言呪文の練習」
「僕も」
悲しいかな「学生の本分は勉強だ」という現実を前に、その場は解散となった。