第9章 【疑惑の渦】
ケイティの友達は、泣きながらケイティを降ろそうと足首を掴んで引っ張っていたが、ビクともしない。
加勢しようと駆けつけたクリス達が一緒になって引っ張ると、ようやくケイティは糸が切れた様に空から落っこちた。
しかし地面に落ちても、ケイティは叫び続けた。悶絶し、何かにとり憑かれたように暴れている。これは自分たちの手には負えないと判断したクリスは即座に指笛を吹いた。
すると遠くの空から、黒い弾丸が飛んでくるのが見えた。助かった、ネサラだ。
「ネサラ!誰でも良い、助けを呼んできてくれ!!」
吹雪の中クリスが叫ぶと、ネサラは城のほうに向かって猛スピードで飛んでいった。ハリーとロンがケイティを抑えながら、泣き叫んでいる友達に事情を聞いた。
「何があったんだ!?」
「分からない!ケイティが突然おかしくなっちゃって!!」
「きっかけは!?思い当たる節は!?」
「その包み紙が破れたときっ……!」
ケイティの友達が、雪の上に落ちた茶色い包み紙を指差した。特に怪しいところのない包み紙から、大粒の宝石で出来た首飾りのようなものが覗いている。
暴れるケイティを抑えながら、ロンが首飾りに手を伸ばしたが、ハリーが素早くそれを制した。
「直接触らない方が良い!僕……それを見たことがある。ボージン・アンド・バークスの店でだ!」
ボージン・アンド・バークスと聞いて、クリスは嫌な予感が背筋を這い上がっていくのを感じた。
あの店にあるのは胡散臭い品物ばかりだと思っていたが、仮にも『ノクターン横丁』にある店だ。本当に呪われた品を扱っている可能性は大きい。
ハリーが首からマフラーを外し、それで首飾りを慎重に包んだ。一瞬止めようと言葉が喉まで出かかったが、幸いハリーに異変は起こらなかった。
ホッとしたのもつかの間、ケイティがますます強く暴れるので、クリス達は大声で助けを呼んだ。しかしこの吹雪の中、中々助けは訪れなかった。