第8章 【頼りになる友達】
ジニーを含めた新メンバーにその場で別れを言い、ハリーとロンと合流するとその足でハグリッドの家に向かった。
ハグリッドの家の傍まで行って見ると、昼だと言うのに窓にはカーテンがひかれ、煙突からは煙が上っていないのが分かった。
「留守かしら?」
「でも、土曜に来いって言ってたのはハグリッドのほうだぞ?」
「ハグリッドー?僕だよ、ハリーだよ!」
ハリーが扉を叩くと、ゆっくりと扉が開いて中から幽霊のように生気の抜けたハグリッドが現れた。たった数日の間に、いったい何があったのだろう。4人は驚きながらも、なるべく平然を装って挨拶をした。
「やあ、ハグリッド……元気?」
「元気……だ。よく来たな、お前ぇら……」
ハグリッドの元気の無さと言ったら、今朝のロンよりも酷かった。
しかし心配したのもその場だけで、家の中に招き入れられると、明かりの付いていない部屋の隅に、白くて大きい蛆虫のようなものが桶いっぱいに入っているのが分かった。4人の脳裏に「後悔」の2文字が大きく浮かんだ。
「ハグリッド、あれは……なに?」
「あれか?あれは――」
そこまで言って、ハグリッドはコガネムシのような黒い目からぽろぽろ涙を流した。何だかよく分からないが、長年の経験から今は慰めるほかないと思う。
クリス達は無言で視線を合わせて頷くと、計画していたかのようにハグリッドの丸太のような太い腕に手を乗せて、何があったのか尋ねた。
「ア、アラゴグのヤツが病気で……もう餌も捕れねぇみたいなんだ。き、きっと……もう、長くねぇ。アイツとは長げぇ付き合いだったから、俺は、アイツに死なれたら――」
アラゴグ――ハグリッドがまだ学生のころに孵した超巨大蜘蛛の名前だ。今は禁じられた森の奥深くに住んでいて、2年生の時、クリス達は白い蛆虫に代わってそいつの生餌になりかけた経験がある。
だからハグリッドには悪いが、あまり同情的にはなれなかった。それでも4人は、精一杯悲しんでいるふりをしてみせた。
「ハグリッド、私達に出来ることはある?」
「いや、その言葉だけでいい。お前ぇたちは学校の勉強があるだろう?クリスから聞いたんだ、将来は――闇払いを目指して頑張ってるって」