第8章 【頼りになる友達】
正午ごろ、クリスは読みかけの本を借りると、そのままグラウンドに向かった。
ハリーがキャプテンなのだから、選抜なんてあっと言う間に終わっているだろう。と思いきや、グラウンドは観客や箒を持った希望者だらけだった。
クリスは大勢いる観客の中から、やっとハーマイオニーを見つけ出した。
「ハーマイオニー、これは何の騒ぎだ?」
「ああ、クリス。見てのとおり、ハリー親衛隊よ」
「ハリー親衛隊?」
「気づいてないの?ハリーが『選ばれし者』として世間で騒がれてから、女子の人気が高いのよ。訂正、高いのは女子だけじゃなかったわ」
ハーマイオニーの言うとおり、箒を持っているのはコリン・クリービー達の様な『ハリー・ポッター』に憧れる下級生が多かった。なるほど、少しでも『ハリー・ポッター』にお近づきになれれば、と下心を出して選抜に来た連中がわんさか集まった結果なのだろう。
まだ時間がかかると思ったクリスは、ハーマイオニーの隣に腰掛けると、借りてきた本を開いて時間をつぶそうとした。しかし前に座っているガタイの良い男の野次がうるさくて、なかなか本に集中できなかった。
(……チッ、これだからクィディッチは嫌いなんだ!)
しかもその男、キーパー志望なのか、やたらとロンの悪口を言っている。
ロンが選抜試験を受けている最中、あまりにも口汚くロンを罵倒するものだから、聞くに堪えかねたクリスは本能のまま持っていた本の角を垂直にし、男の頭の上に落とした。
「痛っっってええぇぇ!!何しやがる!!」
「しまった、つい手が滑った」
「”滑った“じゃない!謝れ!!」
「うるさい、お前は解説者志望なのか?それともキーパー志望なのか?前者なら箒を捨てろ、後者なら口を開くな」
クリスがそうまくし立てると、隣にいたハーマイオニーがたまらず吹き出した。男は殴りかかってくるかと思いきや、顔を真っ赤にしてどこかに去っていった。
「クリス、貴女ってば最高よ!」
「今更だろう?あ、終わったみたいだぞ」
箒を持っていた生徒達がぞろぞろと城のほうに歩き出したのを見て、クリスはハーマイオニーと一緒にハリー達のところへ行った。
どうやらキーパーは無事ロンに決まったらしい。それに、新たにチェイサーとしてジニーが選ばれた。