第8章 【頼りになる友達】
「どんなことをしてきたの、ハリー?」
「う~ん……記憶を見てきた」
「記憶?」
「うん。まあ……僕もよく分かってないんだけどさ……」
散々大げさな予想を立てていた所為もあって、なんとも期待はずれな返答に3人はガクッとうな垂れた。
ハリーは少しだけ疲れている様にため息をついてロンの隣に腰掛けると、当然の様に校長室で何をしてきたか話してくれた。
それは、3人で立てた予想とはまるで違っていた。
ハリーはダンブルドアの『憂いの篩』で、ヴォルデモートが生まれる前の時代まで遡り、そこでヴォルデモートの両親と、その家族を見てきたと言う。ヴォルデモートの母はメローピー・ゴーントと言い、古い純血の家柄だったと説明した。
ゴーント家と聞いて、クリスは眉間にしわを寄せた。
「ゴーント家……聞いたことがあるな。確かスリザリン家の直系じゃなかったか?」
「クリス、知ってたの!?」
「一応グレイン家もスリザリンの血を引いているからな、話しだけは聞いたことがある。どうもグレイン家は分家だったが、ゴーント家のほうが早く零落れてしまって、後世に名を馳せたのはグレイン家の方だったみたいだぞ」
そしてグレイン家も、最後の当主であった父クラウスが死に、その血は絶えてしまった。皮肉にもその直接の原因を作ったのが直系のゴーント家の人間だと思うと、あまりにも滑稽で笑えてくる。
「で?話の続きは?」
「ああ、うん……」
魔女であるメローピーはマグルであるトム・リドル・シニアに恋をしていた。しかしトムには恋人がいた上に、純血主義であるゴーント家が、メローピーの恋を許すはずがない。
そこでメローピーは『愛の妙薬』を使ってトムを自分の虜にさせると、家族のいない隙を狙って駆け落ちしたのだと言う。
「それでトム・リドル……ヴォルデモートが産まれたのか」
「いくつかダンブルドアの推量も入っているけど、殆ど事実と変わらないと思う」
自分は『愛の妙薬』で産まれ、その娘は陵辱の果てに産まれた。なんだかそう考えると、クリスはこの身体には何かしら負の連鎖が起こっているような気がしてならなかった。