第8章 【頼りになる友達】
ハリーがその事を口にしたのは、ある日の夕方の事だった。
「ダンブルドアの個人授業?」
「うん、今日の夜8時からあるんだ。校長室で」
その日出された山のような宿題を片付けている最中、ハリーが何の気なしに言った。それを聞いて、クリスは当然だが機嫌悪そうに顔をしかめた。
「どうしたの?」
「いや……どうしてハリーだけなんだろうと思って」
いくらハリーが予言どおり「選ばれし者」だからと言って、親しい人を殺されたのは自分だって同じだ。
それに認めたくないがヴォルデモートの娘として、自分だって特別扱いを受ける権利はあると思っていた。
だが、実際個人的にダンブルドアから授業を受けられるのはハリー1人だ。それがクリスは納得いかなかった。
「仕方ないわ、クリス。ダンブルドア先生にはダンブルドア先生のお考えがあるのよ」
「はいはい。ダンブルドアのお考えはダンブルドアにしか分かりませんってね」
「拗ねないでよ。何かあったら、ちゃんと全部君たちに話すから」
ハリーはそう約束して、8時10分前になると談話室から出て行った。暫くはロンとハーマイオニーと3人で大人しく宿題をしていたクリスだが、30分もしない内に集中力が切れた。
対ヴォルデモートの為の個人授業など、気にするなと言う方が無理だった。
「こんな宿題、している場合じゃないのにな」
「何言っているの、クリス?こういう勉強だって大事な事よ」
「でも、ダンブルドアの授業の方が絶対ためになりそうだよな~」
クリスに続き、ロンも羽ペンを置いて教科書を閉じた。すると、ハーマイオニーもそれに続いた。なんだかんだ言いながら、やはり2人ともダンブルドアの個人授業が気になって仕方ないらしい。
「やっぱり高度な闇の呪文じゃない?ほら、『例のあの人』に対抗するためにさ」
「違うわよ。むしろその逆で、防衛術じゃないかしら?」
「もしかしたら魔法じゃないかもしれない。私の召喚術と一緒で、ダンブルドアだけが仕える秘密の術とか」
「クリス冴えてる!それ、ありえるぜ」
3人で宿題そっちのけにしてあれこれ話し合っていると、ハリーは1時間ちょっとで再び談話室に戻ってきた。何か変わったところは無いか、3人は好奇心の目でもってハリーを見たが、ハリー自身に特に変わった点は見られなかった。