第1章 The summer vacation ~Charlie~
「なあ、どうせなら付けてくれないか?」
「えっ!?俺が!?」
「良いじゃない、チャーリー。クリスも喜ぶわ」
クリスも喜ぶ――その言葉を信じて、俺はクリスの髪に触れた。
サラサラの黒髪が、触れるたびに指から落ちていく。もうどうして良いか分からなかったが、とりあえず付けるだけ付けてみた。
フレッドとジョージからもらった綺麗なバレッタは、クリスの黒い髪に良く似合っていて、俺はガラにもなく見惚れてしまった。
「良いじゃない!似合うわよ、クリス!」
「うーん、でもちょっと痛いな」
「えっ!?俺、付け方間違えたかな!?」
「髪が引っ掛かかっているのかもしれな――あ、痛っ、痛い!ち、違う!痛い痛い痛い痛い!!」
「ちょっと待ってチャーリー!このバレッタ、髪の毛を食べてる!!」
「えっ!?えええええぇぇぇぇっ!?」
確かにハーマイオニーの言う通り、バレッタの留め具の所が凶暴な歯に変身して、クリスの髪の毛をムシャムシャ食べ散らかしている。
俺は咄嗟に杖を取り出してバレッタに失神呪文をかけたが、時すでに遅し。
クリスの綺麗だった髪は、グッチャグッチャに荒れ、床には抜け落ちた髪の毛が散乱していた。
その惨劇に俺は何も言えず、流石のハーマイオニーもフォローの入れようがないらしい。痛い沈黙がその場に流れる。
「――かに……」
「クリス?」
「確かに、チャーリーからすれば、私は喜ばしくない客人かも知れないが……」
「違うのよ、クリス。チャーリーはまさか……」
「それでもっ!こんな仕打ちを受けるほど嫌われていたなんて思わなかったよっ!!」
【Mission2――大失敗】