第7章 【魔法薬学での発見】
翌朝、クリスが本を返すために図書館に向かって廊下を歩いている時のことだった。
小さく囁くような声で名前を呼ばれたと思ったクリスは、きょろきょろと辺りを見回した。すると向こうの曲がり角からハグリッドが顔をのぞかせて、クリスに向かって手招きしていた。
「お早う。どうしたんだ、ハグリッド?」
「あー、その……うん。ハリー達はどうしちょる?」
「どう……って、特に変わりはないが?」
ハグリッドはもじもじとしていて、いつもの快活さがなかった。
いつものハグリッドらしからぬ態度に、クリスは頭に「?」を浮かべながら、その巨体をじっと見つめた。
詳しいことは分からないが、どうやらハグリッドが「あー」だの「うー」だの言いながら、クリスから何かを聞きたそうにしている事だけは分かった。
だが逆を言うと、それしか分からなかった。
「ハリー達は、その……何か言ってなかったか?だから……その、俺の授業のこととか」
「ハグリッドの授業?いや――」
そこまで言いかけて、クリスはハッと気づいた。
そうか、そういうことか……。引きつる口を必死に取り繕いながら、クリスは必死に言い訳を探した。
「あ、ああ~!ああ、言っていたよ、言っていたとも。いくら将来闇払いになる為とは言え、ハグリッドの授業が取れなかったのは至極残念だったと!!」
「へ?闇払い?ハリー達は将来闇払いになるって言っとるのか?」
「ああ!私もつい最近知ったんだが、ハリーとロンは将来闇払いになりたいらしい!だからマクゴナガル先生と何度も相談して、泣く泣く『魔法生物飼育学』の授業を諦めたって」
よく自分でもここまで口からでまかせが出るもんだと感心した。だがその努力の甲斐あって、ハグリッドはパアーっと表情を明るくした。