第7章 【魔法薬学での発見】
「――で、彼方は教科書じゃなくて、このメモ書きのとおりに調合して、フェリックス・フェリシスを手に入れたと?」
「あ、僕のことズルしたと思ってるだろう?やっぱりね」
「ハッキリ言わせてもらえば、彼方個人の実力じゃないことは確かだわ」
「良いじゃないか、ハリーは大失敗するかも知れないっていうリスクを犯したんだし。それに見合う対価をもらっただけだろ?そんなことより、なんでその本、僕じゃなくてハリーに渡ったんだろう。ホント、運命の神様ってヤツを恨むよ」
「クリスはどう思う?」
「あえて言うなら黒に近い灰色って感じか?いや、待てよ――ちょっと貸してくれ!」
クリスは件の教科書を手に取り、細かいメモ書きに目を通した。
そこに書かれているのは、教科書どおりのやり方ではなく、独自に開発したと思われる固定概念に囚われない柔軟な発想ばかりだった。
それを見て、クリスは体に電撃が走ったような感覚がした。
「こ……これは凄い……」
「でしょ!?良かったらクリスも写して――」
「この柔軟な思想、それでいて裏付された豊富な知識量、失敗を恐れない行動力、地道な計算の積み重ね!そしてあくなき探究心!!これだ、これこそが私の求めていた勉学の姿だ!いや、研究の姿なんだ!!」
「……はあ?」
「こうしちゃいられない、この感動を忘れる前に図書館に行って本を借りてこよう!じゃあ皆、また後で談話室で会おう」
言うが早いか、クリスはハリー達をおいて図書館に走り去っていった。その頭には、もうハリーに負けた悔しさなど微塵も残っていなかった。
「クリスって……本当に、変」
「……だね」
ハリーがズルをしたとか、していないとか、そんなことはどうでも良い。
自分の道を見つけたらひたすら突き進む事しか知らないクリスは、その日11冊もの本を借りて、結局談話室で夜を明かしたという。