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ハリー・ポッターと夢幻の探究者

第7章 【魔法薬学での発見】


 ドラコは同じスリザリン生4人とかたまって喋っていた。
 今までだったら、こちらから声をかける前にドラこの方から嫌味を言いにやってくるのに、ドラコは嫌味を言うどころかクリスと視線すら合わせようとしなかった。

「いやぁ、待たせたね。入りなさい」

 教室の扉が開いて、スラグホーン先生がでっぷりとした腹と同時に顔をのぞかせた。
 教室の中に入ると、幾つもの大なべの中に、見たことのない魔法薬が煮えていた。それらの傍を通り過ぎるとき、クリスは不意にさわやかな夏草の香りが鼻をかすめたのに気づいた。

「……良い匂いだ」
「そうだね、甘くて良い匂いがする。嗅いだことのあるコロンの匂いだ」
「コロン?」

 ロンは何を言っているんだろう、コロンどころか、甘い匂いなど一切しないのに。
 不思議に思っていると、スラグホーン先生が教卓に上がって授業を始める準備をしたので、クリスは追求せずに机に向かった。

 ニッコリ笑いながら、スラグホーン先生は生徒をグルッと見回した。そしてその目がクリスを――正確に言えばクリスの召喚の杖を捉えた瞬間、感動したように大きく見開かれた。

「おおっ、そこにいるのはミス・グレインか!?いやはや、ミス・レイチェル・グリーンとはまた違った、麗しの乙女と言えよう。列車ではお目にかかれなかったのが大変残念だ」
「か、母様の事をご存知で?」
「もちろんだ。ミス・グリーンは私のお気に入りでね。あの美貌、あの才能を持った女性に惹かれない男はいない。今度また夕食会を開こうと思っていてね。良ければ来るといい」

 そう言いながら、スラグホーン先生はハリーとブレーズ・サビニにも熱のこもった視線を送った。
 クリスは「ハハハ」と渇いた笑いでその場を流したが、やはり列車での誘いを断っておいて正解だと確信した。母様から授かった召喚の力を、見世物のパンダ扱いされるのはご免だ。

「さてさて、おしゃべりはこれ位にして授業を始めよう。みんな、教科書をだして――」

 誰よりも先に、ハリーとロンの手が上がった。恐らく授業中にハーマイオニーより先に手が上がった歴史的瞬間といえよう。
 しかしそれは、ただ教科書を持っていないから貸して欲しいという、至極情けない申告だった。
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