第6章 【空を仰ぐ】
しかしそれで済まされるほど、クリス達も馬鹿じゃない。クリスはハーマイオニーと顔を見合わせると、揃ってハリーを見た。
クリスの斜向かいに座っているロンも、漸く気づいたようだ。ハリーは半分呆然としたまま、目だけはダンブルドアの右手に釘付けになっている。
「夏休みに会った時のままだ……てっきり治ってると思ったんだけど……」
「ダンブルドアでも治せないものなんてあるの?」
「あるにはあるわ。でも、本当に限られた……いえ、禁じられたものよ」
ハーマイオニーの言葉に、クリスは左手首に目を落とした。
今はダンブルドアから授かった銀の腕輪によって隠されているが、そこにはヴォルデモートに刻み付けられた『闇の印』が赤々と浮かんでいるはずだ。
しかし本当の意味で禁じられた魔法とは、この『闇の印』ではない。
クリスは気づかれない様に、目の端でハリーの額にある稲妻形の傷跡を見た。
そう、あれこそ正に禁じられた呪文で出来た傷跡だ。きっとダンブルドアの腕も、同様の呪文で出来たのかもしれない。
するとやはりあの右腕はヴォルデモート絡みなのだろう。ならばダンブルドアでも治せないのも頷ける。
「――さてさて、それじゃあ次に新しい先生をご紹介しようかの。ホラス・スラグホーン先生じゃ」
ダンブルドアの隣に座っていた初老の男性が立ち上がったのを切欠に、クリスも一旦考えるのを止め、教職員用テーブルに視線を戻した。
紹介されたスラグホーンという先生は、確かに以前ハリーの言っていた通りセイウチのような髭を生やしていた。
おまけに太って大きな腹がボンっと出た体形の所為で余計にセイウチそっくりに見えた。
昔スリザリンの寮監をしていたと聞いていたから、てっきり排他的でいけ好かない人物かと思ったら、スラグホーン先生は人好きのする顔で生徒全体を見ていた。
「スラグホーン先生は、その昔わしと共に教鞭を振るっておられた。長いこと引退しておられたが、わしたっての希望により再び『魔法薬学』の教師として復職してくださることになった」
「まっ、『魔法薬学』だって!?」
「今『魔法薬学』って言った!?」