第5章 【毎年恒例】
広々とした玄関ホールから大広間に入ると、中は例年通り素晴らしい装飾と、懐かしい顔ぶれが待っていた。先に到着していた監督生のロンとハーマイオニーが、グリフィンドール寮のテーブル席から大きく手を振っているのが見えた。
「じゃあ、ここまでだね」
「う、うん」
「ああ、またな」
これまで一緒に居たルーナはレイブンクローの生徒なので、ここでお別れだ。ふらふらとレイブンクローのテーブルに向かうルーナの背中を見送りながら、クリスとネビルはロンとハーマイオニーの待つグリフィンドール寮のテーブルに向かった。
「2人ともお疲れ様」
「ホントだよ。僕、もう疲れてお腹ぺこぺこ」
「あら?ハリーはどうしたの?」
「それがスラグホーン先生につかまったまま、帰ってこないんだ」
4人の目が、教職員用のテーブルに向けられた。みんな知っている顔ばかりで、初めて見る顔は1人しかいない。頭の薄い太った老人で、セイウチのような立派な髭をしている。きっとあれがスラグホーン先生だろう。
しかし先生がテーブルに着いていると言うことは、ハリーは既に釈放されたはずだ。そう思って辺りを見回してみたが、どこにもハリーの姿は無い。
「まさか……」
「また……」
「巻き込まれたか……」
ハリーは入学式から丸5年経つというのに、ちゃんと始業式に出たのは数える程度しかない。いつもトラブルに巻き込まれて、組み分けの儀式を見損なう運命にあった。
「仕方ない。ハリーの事は座って待とう」
「だね、僕の隣を空けておくよ」
早々にハリーの事は諦め、4人は席に座った。すると、どの寮のテーブルからも、多くの視線が殺到していることに気づいた。みんな魔法省での戦いについて、興味津々といったところなのだろう。
クリス以外は落ち着かずソワソワしていたが、マクゴナガル先生が新入生を連れて大広間に入ってくると、自然と視線はそちらに移った。
「よし、始まるぞ!!」
「シッ!黙って!!」
不安そうな顔をした新入生の列の前方に、継ぎはぎだらけでボロボロの組み分け帽子が置かれる。組み分け帽子はプルプルっと震えると、口のように裂けた切れ目から、不思議な歌を歌い始めた。