第5章 【毎年恒例】
闇が背後に迫る時 不穏がその身を包む時
久遠に続くと信じてた 日々が変わる時か来る
だから私は警鐘す 力を合わせと提唱す
結束を志とするならば グリフィンドールをば師とすべし
統合を志とするならば レイブンクローをば師とすべし
協力を志とするならば ハッフルパフをば師とすべし
団結を志とするならば スリザリンをば師とすべし
互いの力を合わせれば 変わらぬものがそこに有る
だから私は継承す 平和の詩をば啓唱す
組み分け帽子の歌が終わり、一瞬の静寂の後に爆発的な拍手喝采が巻き起こった。マクゴナガル先生は長い羊皮紙を取り出し、新入生の名前をABC順に読み上げた。
「エイブラムズ・ビート!」
金色の巻き毛が特徴的な男の子が、名前を呼ばれて列から飛び出てきた。緊張を隠すように一生懸命平常心を取ろうとしているが、それがかえって小物っぽく見える。頭に組み分け帽子を乗せられると、エイブラムズは肩を強張らせた。
「スリザリン!!」
組み分け帽子が寮の名前を叫ぶと、スリザリンのテーブルから大きな拍手が上がり、エイブラムズは快く迎えられた。それを目で追いながら、クリスはふとドラコの姿を見つけた。
機嫌が良さそうに笑っているその横に、相変わらずパンジーがヘドロの様にべったりくっついているのを見て、クリスは思わず嫌悪感から舌打ちをしてしまった。
それからも順調に組み分けは続き、最後の生徒が終わると、毎年恒例ダンブルドアのとても短い挨拶があった。因みに今年は「腹を満たせ!!」だった。毎年の事ながら、これで本当に優秀な魔法使いなのかと疑いたくなってしまう。
ダンブルドアの合図をキッカケに、空っぽだった皿の上に美味しそうなご馳走が一瞬にして現れると、ロンは待ってましたと手近にあったチキンを誰よりも先に口に運んだ。
クリスとハーマイオニーはそんなロンにあえて触れずに、他愛の無いお喋りをしながら食事を楽しんだ。その時――
「あっ」
「どうしたの?」
「今気づいた……スネイプが居ない」
「それは……」
ハーマイオニーはそれ以上何も言えなかった。トラブルに巻き込まれたハリーと、姿の見えないスネイプ。きっと今頃ハリーはネチネチ虐められている頃だろう。クリスはハーマイオニーと共に、ロンの隣の空席に無言で視線を落とした。