第5章 【毎年恒例】
それから数分後、お菓子を沢山積んだ車内販売のおばさんがやってくると、スラグホーン先生の話しなどどうでもよくなってしまった。
みんなで大量のお菓子を買うと、それを食べながら夏休みの話や、今学期から始まる新しい授業の話しで盛り上がった。
列車は野を越え山を越え、順調に北へ向かって走って行った。その間、まだ始まってもいないDAの会合の話題で盛り上がった。
必要の部屋はもう使えないから、新しい部屋を探そうとか、今度はどんな呪文が学べるのだろうかとか、話すだけでも楽しかった。あまりに楽しくて、クリスは一時ドラコのことを忘れていた。
それから日が暮れて、少しずつ気温が下がり、私服から制服へ着替える時間がきたが、ハリーはいっこうに帰って来なかった。
「どうしたんだろう?ハリー」
「そういえば遅いな」
「大丈夫だよ、ハリーだもん」
ルーナの根拠はないが妙に自信たっぷりな言葉に納得し、男女交代で制服に着替え下りる準備を始めた。
そうこうしている内に列車は速度を落とし始め、ロンとハーマイオニーは仕事があるからと監督生用の車両へ戻っていった。
そして列車がホグズミード駅に到着すると、たちまちホームはホグワーツ生で溢れかえった。
この人ごみの中でハリーを探すのは難しいと判断したクリス達は、諦めてさっさとホグワーツ行きの馬車に乗ろうと、人ごみを掻き分けて進んだ。
「うっ……」
馬車に乗ろうとした時、クリスは思わず声を上げた。馬車を牽いているのはセストラルと言う動物なのだが、これがまた非常に気味が悪い。
そもそも『死』を目にした者だけが見ることの出来る存在と言うだけで気味が悪いのに、見た目も黒々とした骨と皮だけの細い体に、コウモリのような羽が生えている。目は白濁していて、お世辞にも綺麗とは言い難い。
数ヶ月前、ハリーたちがセストラルに乗って遠く魔法省まで行ったと聞いたときには、正気を疑ったほどだ。
「どうしたの、クリス?」
「いや、なんでもな――」
「おい、そんなところで立ち止まらないでもらおうか、グレイン?」